妻は支配欲の強い人だった。
私の財布を握り、スマホをチェックし、位置情報を監視しないと気がすまない。
そしてときに暴力を振るった。
そんな生活を5年も続けたあと、私は別居に踏み切った。
1Kのアパートを見つけた。
わずかな荷物をまとめて、自宅を出た。
少しの家財を新調し、生活の基盤を整えた。
やったぞ、俺は自由になった。
離婚を意識するようになって2年以上経っていた。
いろんな感情が交錯して思い切れなかったからだ。
世の中の夫婦は幸せだなんて思っていないのが普通では?
がまんさえすれば、いつか良いこともあるんじゃないか?
楽しいときだって過ごしたじゃないか。本当に手放す気か?
相手の人生を壊すことになるのでは?ー
けれどもいったん家を出ると、そんな考えは消し飛んだ。
前を向いて、より良い将来を目指して頑張ろう、
そんなふうに思えるようになった。
趣味も再開した。
何をためらっていたのだろう。もっと早くラクになれたのに。
いつしか相手を主、私を従とする上下関係のようなものができあがっていた。
ある種の洗脳だったように、いまとなっては思う。
離婚協議はまとまらなかった。
「離婚はしない」とただ一言。
離婚調停では応じる姿勢は見せたが、その条件はとても飲めるものではなかった。
こうして離婚できないまま、3年目の別居生活を過ごしている。
金銭的には苦しいけれど、今が人生の踏ん張りどころだと考えている。
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